クルーズ船で来沖した台湾人が2017年1月、覚せい剤取締法違反で逮捕されるなど、薬物汚染に絡む台湾と沖縄の関係に関心が集まっているが、台湾でも薬物の蔓延は深刻。中部の彰化県は、保護者が同意すれば、児童生徒の尿検査を行うことができる制度を、新たな学年度が始まる9月からスタートさせることになった。同県政府は「子どもたちを薬物から遠ざけ、保護者には子どもたちの生活に関心を持つよう呼びかけるため」とするが、「検査を受けるのは青少年自身。青少年が、人格を尊重されていないと感じかねない」と疑問も出ている。
台湾政府は「実施は慎重に」のスタンス
薬物汚染は、台湾でも若者の間に広がるなど社会問題化。台湾政府教育部(文科省に相当)は2009年10月、学校が児童生徒の尿検査を行う指針を定め、薬物違反歴のある児童生徒や薬物を使ったとみられる児童生徒などのリストを学期ごとに作成したうえで行うことにしている。尿検査に関する手引きで「尿検査は処罰や制裁ではなく、指導や救済である」として、慎重な実施を求めている。
彰化県が実施するのは、保護者が、子どもが薬物を使っていると知ったりした場合に、同意書を添えて学校側に尿検査の実施を求めることができるというもの。検査できる対象は、学校側が作成したリストに基づいて実施する方法から、大きく広がる。
彰化県教育当局によると、魏明谷(ウエイ・ミング)県知事は13日、若者の薬物汚染防止を目的とした彰化市内のイベントで「多種多様の薬物が若者を巻き込み、健康被害は深刻。薬物の乱用防止は緊急の課題だ」と説明した。
人権配慮などで慎重論
これについて、2017年4月14日付の台湾紙「聯合報」は「教育や予防の観点から反対しないが、子どもたちが疑われていると思わないようにすることが重要」とする専門家の意見を紹介。彰化県PTA協会の代表者は「人権保護の観点から、陽性反応が出たとしても控えめ指導すべきだ」と配慮を求めた。
「薬物を使っている生徒は学校には来ない。尿検査は、薬物乱用防止策としては限界がある」と懐疑的な意見もあった。
台湾では、若者たちに薬物汚染の恐ろしさを伝える「春暉(チュンフイ)志工団」がある。「春暉」は「春の日差し」を、「志工団(ツゴントゥアン)」は「ボランティア団体」をそれぞれ意味する。13日のイベントには、このメンバーも参加し、で若者たちを薬物汚染から守ろうと呼び掛けた。
刑事訴訟手続きが台湾で“実質的に”どのように運用されているのかははっきりしたことは分かりませんが、薬物使用の疑いがあれば、令状を取って尿検査というのが常道。その意味で言うと、保護者の同意があれば、尿検査ができるというやり方は乱暴だということになるのだけれども、台湾社会の薬物汚染は、こうした方法が一定程度是認されるほど深刻化しているということなのでしょうか。
クルーズ船に乗って台湾からたくさんの人たちがやってくる様子は石垣島でよく目にしていたし、台湾に来てからも、出港地の基隆港にでかい客船が停泊しているのを見かけます。その船のなかに、乗客の振りをして薬を運んでいる人がいるのかもしれないと思うと、残念な限りですが、クルーズ船観光がおかしなことにならないようにするためにも、どこかで誰かが手を打たなければならないのは確からしいことです。