台湾沖縄透かし彫り

沖縄を歩いていると、台湾のことを感じることがあります。とりわけ、石垣島などの八重山地方では、そのまんまの台湾に出会ってしまうこともあります。では、台湾へ行ったらどうでしょう。やはり、沖縄を感じることがあり、かつて石垣島から移り住んでいった人たちと足跡を見付けることもあります。だけどそれは、薄皮を一枚剥いだようなところに隠れていることがほとんどなのです。

 沖縄を歩いていると、台湾のことを感じることがあります。とりわけ、石垣島などの八重山地方では、そのまんまの台湾に出会ってしまうこともあります。では、台湾へ行ったらどうでしょう。やはり、沖縄を感じることがありますし、石垣島の痕跡を見付けることもあります。だけどそれは、薄皮を一枚剥いだようなところに隠れていることがほとんどなのです。深く掘りすぎると、原形をとどめなくなってしまうかもしれませんね。元の姿をとどめつつ、だけど、内側に潜むものもちゃんと見える。そんな透かし彫りの方法で、台湾と沖縄を見ていきましょう。   松田良孝のページ | Facebookページも宣伝

台湾のドキュメンタリーフィルムのこと

台南へ行った。

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日本時代の女学生

 「きじゅうそうしゃ」と言われて、それが「機銃掃射」を意味しているのだと理解できるのは、日本語が分かればこそである。

 台湾語と中国語で生活している人たちは「きじゅうそうしゃ」という言葉をどのように受け取るのであろうか。

 10月25日に台南の成功大学で開かれた国際シンポジウム「戦争と記憶」で一部が上映されたドキュメンタリーフィルム「夢中的故郷 National Tainan Girl'sSenior High School」(吳宏翔監督)を見ていて思ったことである。成功大学歴史系の陳梅卿教授らが日本統治下の台南にあった女学校の卒業生から話を聞き、1時間45分ほどにまとめたこの作品は、ルポルタージュ的な質は言うまでもないことだが、映像作品としてのクオリティも申し分ない。

 スクリーンのなかでかつての女学生たちによって語られる言葉はほぼ台湾語。ただ、戦時中の暮らしを振り返る言葉の中に「きじゅうそうしゃ」や「ぼうくうずきん(防空頭巾)」、「しょういだん(焼夷弾)」といった日本語が混じる。すべて中国語の字幕が付いているので、日本語を知らない人でも理解はできるだろうが、その語りをライブでそのまま聞いたら、どうか。

ことば

 「あなたが耳にしているその聞いたことのない言葉は、実は日本語なのですよ」と説明しないと、分からないということも起こりうるだろう。日本語教育を受けた人やそのすぐ下の世代、あるいは、若い人でも日本語教育を受けた世代と一緒に暮らした人が分かるといったところであろうか。

 私は戦争体験の継承という点を意識しながら国際シンポジウム「戦争と記憶」に出席したのだが、言葉の違いをどう乗り越えるのかという点を考えずにはいられなかった。戦後70年という節目の年が間もなく終わろうとする時に、たやすく解決することのできない宿題を意識させられた。

 シンポ終了後の懇親会では、陳教授と隣り合わせになり、動画作品を制作した理由をうかがうことができた。陳教授は、大学教育に携わる立場から「今の学生はなかなか本を読まない」とおっしゃり、続けてこう言った。

「映像しかない」

 たとえその若者が活字を厭うとしても、動画作品でなら伝えるべきことを伝えられるのではないか。70年以上前の経験を多様な方法で記録することの重要性を指摘されたのである。

11月17日に大阪大学で上映

 このドキュメンタリーフィルムを上映する講演会が11月17日に大阪大学箕面キャンパスで開かれる。『夢の中の故郷:台南第一・第二高等女学校卒業生たちの戦前と戦後』上映・講演会だ。午後2時半から午後5時までのプログラムでは、上映のほかに、陳教授が撮影に取り掛かるに至った経緯や撮影中の逸話などを講演するとのことである。