言葉は要らない?
千円札とVサイン
工事中の那覇バスターミナルのところでバスを降りようとした男は、整理券と千円札一枚を運転手に無言で手渡すと、すぐ後ろに立っているパートナーらしき女性を指差して運転手に人差し指と中指を立ててみせた。
バスの運転手は千円札を受け取ると、自分で両替機に入れて小銭にし、那覇市内の市内運賃230円×2人分=460円を運賃箱に入れたらしく、残ったお釣りを男性に返した。もとより整理券に関心はない。那覇空港からのバスなので、整理券がなくとも運賃は決まっているからだ。
外国人観光客との接客では、英語や中国語をちょっとだけでもできたほうがいいに決まっているけれども、まったくできなくてもOKという場面もあるのだった。
年間100万人突破へ
沖縄県のまとめによると、2014年度に来県した外国人観光客は98万6千人で、前年度の1.5倍以上となった。2015年度上期は88万人に達しており、年間で100万人を突破するのはほとんど間違いない。街で外国人観光客を目にする頻度は増加していることになる。
そんなこともあって、私は那覇空港の国内線ターミナルに到着した後、少しだけ歩いて国際線ターミナルまで行き、海外からやってくる観光客たちの雰囲気をなんとなく感じ、その前にある停留所からバスに乗ったりすることもある。路線バスに乗ろうとしている人たちがどこからやってきた外国人客か推し量るうえでもこれは悪くない方法だと思っている。停留所で待っているときに、どんな言葉でしゃべっているのかを聞いておけば、どこからやってきた人なのかだいたい想像が付く。
冒頭のやりとりでは、外国人と運転手は一切発話はせず、まったく無言で運賃の受け渡しを済ませていた。
このあと、別の外国人客が泊高橋で降りることになった。このときも、客と運転手は一切発話はなし。客が千円札を運賃箱に入れようとしたらしく、運転手は手のひらで運賃箱にふたをするようにしてその札を受け取り、やはり自分で両替し、運賃を入れて、お釣りを返していた。
外国語も日本語も、どちらも一切発せられることはなかった。
だから、外国語ができなくても全然大丈夫なのです、と言うつもりはない。外国ができなくても、それなりの方法で切り抜けることはできるということはいえると思う。