高級リゾート
蘇澳にもいよいよこういう場所ができたのかというが、今年7月に台湾を訪れたときの印象である。台湾有数の港町「南方澳」と、夏でもしびれるほど冷たい冷泉で知られる台湾東部の街に、高級リゾートホテルが建っていたのだ。
一晩泊まってみようかと軽く予約できるような庶民的な値段ではなく、ホテルのロビーから館内を眺めただけにすぎないが、高い天井の明るいロビーから冷泉のプールで水遊びをする人たちの姿が目に映り、なんとも涼しげな気分になったものである。
港の喧騒は健在
やせ我慢をするわけではないが、個人的な好みを言えば、南方澳界隈の雑然とした空気に身を任せるのが蘇澳を楽しむ一番の方法だと思っている。岸壁の漁船から次々の魚が引き揚げられ、新鮮な魚を商う人と買い求める人がにぎやかにやり取りをする雰囲気もいい。
暑いとかほこりっぽいとかネガティブな反応も返ってきそうだが、冷泉に飛び込めば、何事もなかったかのように気持ちは上向くのだ。
蘇澳は台湾の宜蘭県にある街である。
南方澳はそこに築かれた漁港で、日本が台湾を統治していた1923(大正12)年に完成した。沖縄とのかかわりに目を向けると、沖縄の漁民は築港の前から南方澳に足跡を残しており、港が整備された後は、与那国島など八重山の漁民やそれ以外の人たちが台湾への入口として頻繁に行き来した。「台湾の玄関口」と呼ぶほどの規模ではもちろんないけれども、基隆や高雄では味わうことのできない、コンパクトな喧騒が南方澳にはある。
少し遠回りして
台北方面と宜蘭を結ぶ雪山トンネル(全長12.9キロ)が2006年に全面開通したあとは、高速バスの便が飛躍的に高まり、台北から2時間かからずに行けるようになったのも魅力だ。台北っ子にしてみれば、週末の日帰りドライブに最適の立地である。
もっとも、時間が許すならば、台北から列車で蘇澳まで行き、そこから路線バスかタクシーで南方澳へ行くようにしている。海沿いのわずかな平地を縫うように走るその列車から眺めると、青く深い海がきらきら光り、つい居眠りしてしまいたくなるのだ。