日本語で通す
驚いたのは、外で行列にしている客に日本語が通じようが通じまいがお構いなしに、店員が「何名様ですか」と日本語で尋ねていること。そして、台湾、中国、香港、韓国などから来たとおぼしき客たちがほとんど例外なく質問の内容を理解し、指を使って、「二」とか、「五」とか、そんな感じで答えていることにも驚いた。
こんなふうにやればだいたい通じるんじゃない?といった空気が漂い、肩の力が抜けたところが大変好ましい。
マニュアル化
「暖暮」は沖映通りを歩いてジュンク堂へ行く時などに前を通るので、たまに立ち寄って食べていた店。最近は、必ずと言っていいほど行列ができていたので、何があったのかと大変に気になっていた。「外国人でイッパイなってる」という噂の真偽も確かめたくて、とある晩、行ってみた。
すると、やはり行列が。最大で10人余りが並んだときには、私の前後から5、6人ずつ外国人に挟まれる状態になり、店の中に入ってもこの状態は変わらないのでありました。
日本語で通すという店員さんの姿勢は店内でも同じで、麺の硬さやスープの種類、辛さなどを客に選ばせるときには、英訳したシートを渡して自分で選んでもらう方式。
私の隣には、台北から来た初老のカップルが座ったので様子を見ていると、シートが出てきた直後に「これはどうするの?」などと尋ねられたものの、すぐに注文のやり方を理解したようでした。
外国人の人気が定着したのは、この英語シートに代表されるようなマニュアル化が関係しているのだろうか。
食券販売機
もう一つ気になったのは、食券を自販機で買って注文する方式。
旅先で食べ物屋に入って店員さんと何かしゃべったりするのは悪くないけれども、こうした触れ合いにこだわりを持たなければ、注文は食券機で十分である。この店の場合、行列をしているところにポスターのような大きさをしたメニューが張ってあるので、何を注文するかは、自分の番が来るまでの間にじっくり考えることができる。
どうしても地元の人としゃべりたいのであれば、下手であれ何であれ、現地語で話し掛ければいいのだから、食を仲立ちとしたコミュニケーションと、食券販売機とはそもそも関係がないはずである。
もちろん、味が良いのは大前提。
私はこのときはネギごまラーメンとギョウザ、ビールという組み合わせ。するすると平らげてしまったために長居しづらくなり、お客さんの様子をじっくり観察するという入店前のプランはあえなく挫折した。何せ、外ではこちらをじっと見ている行列の眼があるのですから。