主は去れども
ちょっとごらんなさいという具合に、ひょいと見せられた。
密で、繊細。
その質感は明々白々。
台湾から石垣島に移住し、山間にある嵩田地区で暮らしていた女性がご自分でつくられたというほうき。ススキの穂を束ねてあります。
2015年4月10日に亡くなった台湾・員林出身の浅野静江さん(享年91、台湾名・黄阿梅)の手になるものです。2016年2月23日の十六日祭(ジュウルクニチィ、旧暦1月16日に行う先祖供養の伝統行事)に合わせてお墓に伺った後、ご自宅にお邪魔したところ、ご長男がみせてくださいました。
この写真の奥に見える白いタイル張りの設えは、薪を使った昔ながらのかまどで、こちらは築40年ほどというベテランの現役選手。コンクリート敷の床には、灰だってこぼれるし、道具を出し入れするたびにいろいろなものが飛び散りますが、そんなときにはススキのほうきでささっとはらってしまう。
主が亡くなって10カ月余り。
残されたものは歴然として生き続けているのですね。