マニアック?
テレビか映画かを問わず、このところ、八重山と台湾の関係をドキュメンタリー作品にする試みが少なくないように思います。人によっては、マニアックなジャンルと片付けてしまうかもしれないこの関係に対して、大きな波ではないけれども、常にさざ波ぐらいは立っているといっていいでしょう。
去年(2015年)は、台湾のテレビ局の公視(PTS)と民視(FTV)が石垣島に住む台湾系の人たちを訪ねてやってきました。戦後70年という節目に合わせた番組制作だったわけですが、植民地統治の終結によって八重山・石垣の台湾人をめぐる環境がどのように変化したのかというテーマに、台湾のメディアが着目するのはむしろ当然のことなのでしょう。
撮るなら早めに
八重山・石垣には台湾系の人たちが多く暮らしているからこそ、こうした映像作品が成り立つわけですが、別の見方をすると、ドキュメンタリーにせよ、ノンフィクションの記事にせよ、植民地期の台湾を経験している人を正面から取り上げるのであれば、早いうちにやったほうがいいということになります(当事者性の高い方がいなくなれば、小説やドラマなどの手法にシフトしていくかもしれない)。そういえば、PTSは、西表島の炭鉱跡にまで足を伸ばしたのですが、かつてそこで石炭を掘っていたという台湾人はすでにおらず、当時のことをよく知る地元・西表島の方がカメラの前で西表炭鉱について説明したのでした。やるなら、早く取材したほうがいいし、早く撮ったほうがいい。
3月5日から上映
「はるかなるオンライ山」はこうしたタイミングで撮られたドキュメンタリー映画です。「オンライ」とは台湾語でパイナップルのこと。台湾の人たちが持ち込んだパインが八重山に定着していったという事実を軸に、台湾と八重山の関係を描き出しています。当事者へのインタビューはもちろんのこと、かつての様子には再現シーンを用いつつ、八重山と台湾の「今」にまで目配りがなされています。
上映は2016年3月5日から11日まで。大阪のシネ・ヌーヴォで。