台湾沖縄透かし彫り

沖縄を歩いていると、台湾のことを感じることがあります。とりわけ、石垣島などの八重山地方では、そのまんまの台湾に出会ってしまうこともあります。では、台湾へ行ったらどうでしょう。やはり、沖縄を感じることがあり、かつて石垣島から移り住んでいった人たちと足跡を見付けることもあります。だけどそれは、薄皮を一枚剥いだようなところに隠れていることがほとんどなのです。

 沖縄を歩いていると、台湾のことを感じることがあります。とりわけ、石垣島などの八重山地方では、そのまんまの台湾に出会ってしまうこともあります。では、台湾へ行ったらどうでしょう。やはり、沖縄を感じることがありますし、石垣島の痕跡を見付けることもあります。だけどそれは、薄皮を一枚剥いだようなところに隠れていることがほとんどなのです。深く掘りすぎると、原形をとどめなくなってしまうかもしれませんね。元の姿をとどめつつ、だけど、内側に潜むものもちゃんと見える。そんな透かし彫りの方法で、台湾と沖縄を見ていきましょう。   松田良孝のページ | Facebookページも宣伝

与那国と台湾 本当は108キロ?

111キロ

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 与那国島と台湾の宜蘭県蘇澳鎮の距離は111キロで、これが日本と台湾の最短距離だと思っていたのだが、与那国の西崎灯台と蘇澳の蘇澳燈塔灯台について、それぞれ日本の海上保安庁と台湾の交通部航港局が公開している位置情報を手掛かりに、日本の国土地理院がウエブ上で公開している距離と方位角の計算プログラムで確認してみたところ、108.5キロまたは107.6キロと出てしまった。(交通部航港局が公表している位置情報には2種類の数値が記載されているため、計算結果も二通りとなる)

交通部航港局-燈塔相關資訊

沖縄の海の道しるべ

測量計算(距離と方位角の計算)

「台湾と日本の最短距離は111キロ」という定説は修正されるべきなのだろうか。

 蘇澳鎮の漁港である南方澳を起点に与那国島の西崎までの距離を測れば、それは111キロとなるに違いないのだが、蘇澳燈塔は、南方澳よりも東側に、ということは与那国島寄りに突き出たところにあるため、最短距離を「更新」してしまったということなのだろう。

西崎から蘇澳へ大周り

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 こんなことを調べる気になったのは、西崎から蘇澳まで公共交通機関を使って一番早く行くにはどうしたらいいのか考えていたからだ。かつては船で10時間余りかけて行き来していた最短の海を、今ならどうやって越えるのが効率的なのか。

 一番のカギは沖縄から台北桃園へ向かう飛行機をどうするかということなのだが、複数の航空会社が乗り入れている沖縄発台北行きと、中華航空のみが週2往復だけ飛んでいる石垣発台北行きとを比較してみると、与那国発で乗り継ぐという点では、石垣発のほうが優位性が高い。

 この、石垣発14時30分、台北桃園着14時25分の中華航空CI125を利用して、西崎から蘇澳を目指すとすると、西崎を午前7時半に歩き始めることになる。久部良を午前8時に出る生活路線バスで祖納を目指し、与那国空港で降ろしてもらってから空の旅に移る。

 その後、与那国から石垣、台北桃園と乗り継ぎ、台湾内の移動はバス。台北の圓山に行き、そこで別のバスに乗り換えると、南方澳に午後6時10分に着く。

マニアックな旅

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 日本の最西端から台湾の最東端へ向かう旅は、公共交通機関のみを使うと11時間かかる。平均時速10キロのこの旅は、かつて船で行き来していたときとほとんど変わらないスピードである。

 急ぐ人たちには不満な旅程かもしれないが、乗り物が好きな人たちには悪くない旅だと思う。などと言うと、「マニアックな人しかやらない旅」と笑われることもあるのだが、旅なんてものが好きな人は、大抵みんなどこかマニアックなんじゃないのか。そう言われるのが嫌なものだから、趣味とか、凝っているとか、そんな表現をしているだけなんじゃないだろうか。

 与那国島では、台湾との間を直接結ぶ航路(海、空どちらでもいい)を開設できないかという話が出ては消え出ては消えしているが、実現には至っていない。与那国島のほうには、もし台湾からたくさんの外国人観光客がやってくることになった場合、どう対応したらいいのか分からないという意見もある。確かに、島のキャパシティから考えると、一度にたくさんの観光客が来島するという方法が与那国島のスタイルに合っているかどうかは検討の余地がある。

イチャリバチョーデーはどこへ?

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 2016年3月30日に那覇市沖縄県立博物館・美術館で開かれたシンポジウム「人びとの記憶と記録に残るラジオ放送」の座談会を聞いていて、沖縄放送協会OHKの会長を務めたこともある川平朝清さんがこんなことを言っていた。

 「与那国に自衛隊が来るということは自分の国を自分で守るという点ではこれはいいと思うが、同時に、台湾に対して自由に来られるようにあの島を開けてくれないかという気がする」

 「沖縄のイチャリバチョーデーはどこに向かっていってんのかな。もっともっと南のほうに向いていただきたいな」

 台湾生まれの川平さんだからこういう話になるという側面はもちろんあるだろう。そうと分かったうえで、私にはこの言葉から「自衛隊のことはもちろん大事だけれども、そればかりではなく、島の立ち位置のようなものを論じるべきじゃないのか」というメッセージを汲み取った。

 与那国と台湾とダイレクトに結ぶことはたやすいことではないけれども、ならばそれを逆手にとってみたいものだ。遠回りをしてみて、そこに与那国ならではの国境の形を実感することになるのか、「ほんとはこんなに近いのに」と地図を見ながらじだんだを踏むことになるのか。どちらにしても、与那国が「南のほうに向いて」いるのかどうかを考えるきっかけになるはずだ。

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