設計は台湾総督府の森山松之助
新宿御苑に台湾閣という建物があると知り、里帰りのついでに足を運んだ。八重山・沖縄と台湾の関係を調べているうちに、こんなところまで来てしまったわけだから、我ながらマニアックなものである。しかも、暑いのに。訪問したのは2016年5月22日の午後4時すぎで、気温28.7度。石垣島とほとんど変わらなかった。
台湾閣は1927(昭和2)年に御涼亭として建てられたもので、2004年に東京都の都選定歴史的建造物に指定されている。都のウエブは「卍形の平面をもつ御休息所をはじめ、屋根の形や色、内部装飾などで中国の建築にならっており、日本では数少ない本格的中国建築の一つ。柱に台湾杉、天井の鏡板に台湾扁柏(へんぱく)や台湾桧など、台湾から取り寄せた部材が多く使われている」と紹介している。台湾の要素がふんだんに取り入れられているのは偶然ではないはずだ。
設計者の森山松之助は1919(大正8)年に完成した台湾総督府(現・台湾総統府)を設計した人物である。
総督府に沖縄出身者
2016年6月2日から始まる八重山台湾の国境観光モニターツアーでは当初、台湾総統府の一般公開に参加することになっていて、台湾総督府のことを調べているうちに、台湾閣にたどり着いた。ただ、一般公開は取りやめに。蔡英文が総統に就任したばかりということもあって、楽しみにしていたのだが、次回を待つことにしたい。
台湾総督府はアジア太平洋戦争末期に激しい攻撃を受けており、当時台北に住んでいた沖縄出身者のなかには大きく損壊した様子を目にした人もいる。戦後は、台湾からの引き揚げを待つ沖縄出身者が基隆に移動するまでの間、一時的に集められていた場所。今回のツアーでは、台湾総統府を見学した後に基隆港へ向かい、引揚者たちがたどった足取りを追体験することにしていたわけで、内部に入れなかったとしても、こちらのほうはぜひ実現させたい。