アートで台湾と沖縄をつなぐ
時計の針がぐるりと一回りして元のところに戻ってきたとでもいえばいいのでしょうか。三線体験コーナーで無心に弦を弾いている台湾の人たちの姿に、そんなことを考えました。
2016年10月14~16日、アートを切り口にした沖縄と台湾をつなぐイベント「沖縄文創市集」(株式会社琉球ぴらす主催)が開かれたのは、台北当代芸術館。日本統治期に整備された建成小学校の校舎を再利用した施設です。台北にあるリノベーション施設としては、松山や華山といったところが有名ですが、当代芸術館はその「はしり」と言っていいような場所だと思います。
Tシャツや焼き物、食などさまざまなジャンルから参加があった「沖縄文創市集」
=2016年10月14日、台北当代芸術館で松田良孝撮影
「かつて」を通り過ぎて「今」へ
建成小学校は、植民地台湾に住んでいた八重山関係者の子どもが通っていたこともあります。そこが建成小学校であったことが分かるのは、施設の生い立ちを示した年表式のプレートが入り口のすぐ右に掲げてあるからなのですが、ほとんどの人はそこを通り過ぎて中に入っていきます。「やや豪華な感じのする校舎」とでも言ったらいいような館内を歩いてみても、かつて八重山の子どもたちが学んでいた場所であるということは分かりません。
逆に言うと、そこに入ってみると、かつてと今がどれだけ切り離されたものなのかを感じることになるわけですが、実際、当代芸術館に来る人たちはこの場所が植民地期に建てられた校舎だったということを意識しているわけではありません。あくまで現在の台湾にあるアート施設として利用している。その場所で今度は、台湾と沖縄をつなぐ試みが行われたということになるのです。
「沖縄文創市集」の会場となった台北当代芸術館。日本統治期に建てられた建成小学校の校舎を使っている
=2016年10月14日、松田良孝撮影