旧台北高校を訪問
台湾師範大学。アップルマンゴーを生んだ台北高校を前身とする
=2016年8月28日、松田良孝撮影
マンゴーのことを調べるつもりが、思いがけず、「自由」のことを考えさせられる結果となった。2016年10月26日に台湾師範大学の蔡錦堂教授にお目に掛かってみると、そういう意外な顛末が待っていた。
アップルマンゴーが植民地期の台北高校で生まれたという話を知ったのは、沖縄から台湾へ引っ越すことが決まった後、あらためて台湾のなかにある沖縄絡みのことを調べていたときのこと。シャープの副社長だった佐々木正氏が在学中に作り出したということで、同氏は自著『人がやらない、人がやれない』(経済界/2000年)に記している。
「カンニングしてもいいよ」
台湾師範大学の構内。台北高校の同窓会が贈った時計が掛かっている
=2016年10月26日、松田良孝撮影
台北高校といえば、終戦直後の沖縄でラジオのアナウンサーを務めた川平朝清氏が在学していた学校。その兄、朝申氏について研究する集まりに小生自身が出入りしていたこともあって、朝清氏とは面識があったので、台北高校の後身となる台湾師範大学の蔡教授をご紹介いただいた。
そのときのことは「八重山毎日新聞」のコラムに執筆済みだが、つまりは、蔡教授は教育でも「自由」を実践していて、学生のカンニングでさえ容認している。もちろん、何をやってもいいわけではない。「カンニングをするような人は、社会に出てからもそういうふうに生きていくことになる。それでもいいならカンニングをしたらいい」というわけである。
聞く耳
台湾師範大学にある「自由自治の鐘」
=2016年11月6日、松田良孝撮影
たとえば、高校の教育現場では、あくまでひとつのメッセージであると断ったとしても、「カンニングしてもいいよ」と生徒たちに伝えることは難しいかもしれない。大学受験や就職活動といった目の前のハードルを乗り越えられるように手助けするが求められるからだ。八重山のように、自分が暮らしている地域に大学がないということになればなおさらだ。値上がりしているとはいっても、国公立大学の学費は安めで、国公立か私大かという点は、子どもを大学に通わせる保護者の家計負担に直結する。
要は、「カンニングしてもいいよ」というメッセージを発することができる人、発することが求められる人は、発し続けておいたほうがいいということなのではないか。乱暴に聞こえるかもしれないこの言葉も、それなりの環境と心づもりがあれば、聞く耳を持つことはそれほど難しくない。