アプリで使いやすく
台湾へやってきて、黄色い自転車があちこちで走っているのを目にしたという人は少なくないと思う。私もときどき利用する。
ユーバイク(You Bike)である。
かつては、自転車を貸し借りする無人のステーション(「ポート」と呼ばれる)がどこにあるのか分からず、借りたはいいけれども、どこに返せばいいのかと迷ってしまうこともあったが、最近では、スマートフォンのアプリで検索できるようになっているので、土地に不慣れでも使いやすくなってきた。
沖縄と相互に関心
このユーバイクを2016年11月26日、沖縄県の翁長雄志知事が視察した。
沖縄側がユーバイクに関心を示していることを表しているわけだが、ユーバイクの何友任社長(総経理)にインタビューしてみると、沖縄側が導入するのであれば協力するとの答えが返ってきた。ユーバイクの沖縄導入について具体的な検討に入る前に、双方が互いに関心を寄せ合った段階というところだろう。
何社長は、ユーバイク導入の可否を決める場合の検討項目としていくつか例を挙げているが、興味深いのは「外出に関する人々の習慣」という項目である(中国語では「民衆出行習慣」)。
ちょっと考えてみよう。
筆者が20年余り暮らしていた石垣島では、朝になると、道路は登校途中の高校生で自転車ラッシュが起きるし、高校生以外でも自転車の盗みが社会問題化したりする。その石垣島の目線で那覇の様子を見てみると、高校生に関していえば、自転車の利用は比較的に少ないように思える。バスの路線が張り巡らされ、モノレールもある那覇と石垣島とでは、通学の風景はおのずと違ったものになるわけだ。
似通っているところもある。
たとえば、クルーズ船でやってくる外国人客。どのような手段を使うにせよ、港のある岸壁から市街地や観光地まで移動しなければならない。タクシー、観光バス、歩きといったところだろう。
考えるヒントに
高雄市の公共自転車レンタルシステム
=2016年10月3日、新左営駅前で松田良孝撮影
こういう社会環境の沖縄へユーバイクのような自転車シェアシステムを導入したらどのようなことが起こりうるのか。通勤や通学の手段として支持が広がり、学校や職場にポートが設置されていくかもしれないし、バスとモノレールとマイカーという従来の生活パターンが変わらずに続くかもしれない。
観光客はどうか。台湾の観光客が使用することが容易に想像できるが、クルーズ船の観光客などは毎日やってくるわけではない。
沖縄と自転車シェアシステム。
このコンビですぐに何かを始めようというわけではない。公共交通や観光客の移動について考えるヒントを与えてくれる組み合わせではある。