MICE対応へスキルアップ
2020年9月に中城湾港マリンタウン地区で大型MICE施設(約3万平方メートル)が供用を開始するのに備え、東部消防組合の職員が専門的な中国語の習得に向けて台湾・基隆市で研修するための協定が2017年6月1日、同市内で結ばれた。
16年に海外から沖縄を訪れた観光客は初めて200万人を超え、このうち、台湾、中国、香港を合わせた中華圏からの観光客が6割を占める。同組合は「中国語の取得は必須」(城間俊安南風原町長)として、協定の意義を強調している。
基隆も「意義」強調
協定は同組合と基隆市消防局の職員が相互に研修する内容で、同消防局の唐鎮宇(タン・ツェンユ)局長は「私たちは素晴らしい事例をつくることができた。この提携を機に交流を深めることで、相互にメリットを享受できると信じる」としている。
調印式には、南風原町とともに同組合を構成する与那原町の古堅国雄町長と西原町の上間明町長も出席。城間町長は「東部消防側は中国語を、基隆市側は日本語を取得することで、台湾、沖縄を訪れる観光客に対する安心・安全を提供することができるようになる」とあいさつした。
今回の協定では県台北事務所が両消防の仲介役を担い、吉永亮太所長は「将来を見越した素晴らしい取り組み。今後も、沖縄と台湾のさまざまな交流を加速させていきたい」と述べた。
第1号は浦崎さん
最初の研修職員となる同組合消防本部の浦崎直力(なおちか)さん(25)=南風原町=は2日、5カ月間の研修をスタート。「消防職員として台湾、中国の方々に対応できる技量を身につけるために、5カ月間頑張りたい」と話した。
同本部は、浦崎さんが研修を終える11月をめどに次の研修職員1人を台湾に派遣する計画。
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台湾北部を代表する港湾都市、基隆=2016年6月6日、松田良孝撮影
管轄区域内の中城湾港マリンタウン地区で大型MICE施設の供用開始を2020年9月に控える東部消防組合(神里昌二消防長)は、外国人の災害対応や救急搬送が増加する可能性があるとして、職員2人を基隆市消防局に6月から5カ月間派遣し、消防に関する専門的な中国語を習得させることになった。同組合は本年度から、英語、中国語、韓国語のいずれかの能力が一定水準以上であることを条件にした職員の募集も行い、英語と中国語合わせて4人を4月に採用しており、6台ある救急車すべてで、3種類の言語のうちいずれかを習得した職員が対応できる体制を目指す。
MICEで外国人増
県台北事務所によると、クルーズ船の利用客以外で台湾から沖縄を訪れた観光客の動向をみると、観光客自身の個別手配とフリープランパック旅行を合わせた割合は14年度には40・4%だったが、15年度は71・4%と急増。ガイドが付き添わない旅行客が増えることで、消防に関連した業務で中国語の必要性は高いとみている。
同組合は西原、与那原、南風原の3町で構成。大型MICEを整備する中城湾港マリンタウン地区は与那原町と西原町にまたがる。
大型MICEは3万平方㍍の展示場などを備え、イベントが開かれれば、外国人も多数来場する可能性がある。このため、同組合は昨年6月から台湾側に打診し、同事務所の仲介などで基隆市消防局の協力を取り付けた。
職員2人が5カ月研修
基隆は台湾北部を代表する港湾都市で人口37万人。沖縄向けのクルーズ船も発着する。
同組合では、海に近い基隆の環境が東部組合と似ており、津波など海に関連した災害について共通点があるほか、歴史的に沖縄とのかかわりが深いことなどから研修先に選んだ。桃園国際空港を抱える桃園市消防局なども候補に挙げて検討した。
同組合は6月1日、基隆市内で基隆市消防局と職員交換派遣研修協定書を締結。同2日には1人目の職員が研修をスタートし、基隆市消防局の業務に参加しながら専門的な中国語の習得に努める。この職員の研修が終わる10月をめどに2人目の研修をスタートさせ、来年2月まで実施する。
18年度以降も研修を継続できないか検討していく。
締結式には3町長が出席する方向で調整している。
多言語化、消防も必要
同組合による、外国人が関連した救急対応は「管内では今のところ多くないが、(大型MICEが供用を開始する)3年後には確実に増えるとみている」(総務課)。今回の研修以外にも、16年度からは職員が自主的に中国語を学ぶ講習も実施している。
城間満総務課長は「管内には、すでにアジア圏の人がかなり来ている。大型MICEで国際会議が開かれるようになると、外国人の災害対応や救急対応の可能性が高まる」として、消防の多言語対応の必要性を強調している。