台湾嘉義県の農村部に位置する大林鎮上林地区から多くの人たちが復帰前の南大東島へ出稼ぎに行っていたことはすでに本ブログで紹介していますが、そのいきさつをテーマにした絵本の制作が進められています。
台湾から南大東島への出稼ぎをテーマにした絵本を手にする人たち
左から国立嘉義大学の胡惠薫副教授、上林社区発展協会の孫家榕前理事長、南華大学の邱琡雯教授
2018年1月16日午前、嘉義県大林鎮上林地区で松田良孝撮影
制作に携わっている人たちの間では、村の高齢者が体験した貴重な体験を起点とするさまざまな取り組みが模索されています。絵本はそのひとつといえます。私も少しだけお手伝いしているところですが、沖縄と台湾のつながりを新しい角度から見詰め直す企てになるのではないかと考えています。
大林は、台湾西部の嘉南平原に位置し、日本統治期に整備された製糖工場が1995年まで操業していた地域でもあります。このため、その周辺ではサトウキビを生業とする農家が少なくありません。サトウキビの刈り取り作業に慣れた人たちが多数暮らしていたからこそ、キビ倒しの人手が不足した南大東島へ出向き、加勢することができたといえます。
逆に言うと、南大東島への出稼ぎ体験をひもといていくと、日本統治期に近代化が進んだ台湾のサトウキビ産業にたどりつき、さらに、台湾がたどってきた道が見えてくるということになります。
今回制作が進んでいる絵本のなかでは、台湾の人たちの暮らしを支えている外国人労働者にも言及しています。これは、上林地区のお年寄りたちがかつて沖縄で外国人労働者として暮らしていたという事実に着想を得ています。
ひとつの村から出発した物語は、台湾の「今」や「歴史」を見据えた普遍的な視点をはらんでいるのです。