「島々」は似ている
風がよっぽど強いようだ。畑の中に石積みを築き、風よけにしている
2019年4月15日、台湾馬公市風櫃で松田良孝撮影
南西諸島の一番端にある沖縄県八重山地方は、有人と無人合わせて32の島からなる島嶼地域です。主島の石垣島は、那覇から飛行機で1時間ほどのところに浮かんでいます。
台湾のなかで、八重山とよく似たエリアといえば、澎湖諸島でしょう。島の数は90を数え、八重山の3倍近くというデータ的な違いはありますが、台北から飛行機で約1時間の島嶼地域という点でいうと、そっくりです。
「沖縄へ行く」
そして、もうひとつ似ているのが、土地の呼び方です。
「沖縄へ行く」
なんていうふうに言います。自分だって沖縄県に住んでいるのに「沖縄へ行く」とはおかしな感じがしますが、これが普通です。さらに、八重山郡与那国町であるところの与那国島から八重山の主島である石垣島へ行くときには
「八重山へ行く」
と言うことがあります。
これが八重山に住む人たちの生活実感なのです。沖縄は自分たちの土地であってそうではなく、八重山は自分たちの土地であると同時にそうではないという関係が根付いています。
「台湾から来た」
これの現象とネガとポジの関係となったような体験を、私は澎湖諸島でしました。
澎湖で行われたイベントを取材していたところ、台湾島からやってきた人が
「台湾から来ました」
なんていうふうに説明するのを耳にしたのです。澎湖は、台湾であって台湾でないポジションなのでしょう、きっと。
私の中国語があまりに拙いものだから、「この人に台北とか高雄とか言っても通じないから」と、ごくごく簡単に「台湾」という地名を持ち出してきた可能性がまったくないとは言えませんが、地理的にはっきりと離れているものだから、そうであってそうでないみたいな関係が起こる。
聞くところによると、学校の廃校問題や、医療、高齢化など抱えている課題も八重山ととてもよく似ているようです。都市と地方を普遍的に隔てる溝を考えるうえで、澎湖と八重山の比較はおもしろそうです。今度はじっくりと過ごしてみたいと思いはしても、そういう時間を作るのはそうそうたやすくないというところまで似ているのでありました。