新印象主義の点描を観る
アシール・ロージェ「川辺のプロムナード」(1888年)
セザンヌなど印象派とその時代を展観するという美術展「巨匠たちの奇跡」を見て、私の心に最も深い印象を与えたのは新印象主義の作品群である。点描を駆使したその作品から見えてきたのは、現実の世界から虚構を引き出してしまうかのような緻密さだった。
点描というので、ニードルか何かをカンバスに執拗に突き立てて描いた絵なのかなと思っていたが、筆先を点のように当ててできる小さな色の面をいくつもいくつも、それこそ執拗に並べていくことで一枚の絵を描きあげる手法だった。
小さな面がいくつも並ぶ
とりわけ気に入ったのはアシール・ロージェ「川辺のプロムナード」(1888年)。
その歩道は、色の異なるいくつもの小さな面で構成されていて、それだけなら、描き方が細かいといったところで私の印象も終わるわけだが、ポイントはそこにはない。歩道を歩いている人々にある。彼ら/彼女らもやはり、小さな面をいくつも並べることによって仕上げられているので、あたかも歩道から伸びて生まれてきたかのように見えるのである。
全67点を見るのには小一時間かかり、若干疲労も覚えたが、遠目にはタイルを巧みに並べて一枚の絵を作り上げたようにもみえる点描の新印象主義に触れることができたのは収穫だった。
沖縄県立博物館・美術館で2016年6月15日から8月14日まで。