范将軍と謝将軍
范将軍と謝将軍といえば、互いに思いやり合って落命した故事で知られていますが、間近で実際に動いている姿を見るのは初めてのことでした。爆竹の煙が立ち込めるなかで、真っ黒い顔をしたずんぐり体形の范将軍が意外に軽やかなステップで舞い、舌を出したおなじみの顔をした謝将軍が長身から長い腕をぶらつかせるのです。神様やその周辺に控える者たちを実際にこの目で見る、撮るというつもりで台湾にやってきたので、土地公を祀る景福宮という廟の90周年記念行事は絶好のチャンスとなりました。
行列の向こうに「101」
「建基九十週年大典」と呼ばれるこの行事は2016年9月10、11の2日間。このうち、神々を押し立てて廟の周辺を行列が練り歩く「遶境」は11日に行われました。南北約2キロ、東西約1キロの長方形のエリアを歩いていきます。行列について歩いていくと、ときどき高層ビルの「101」が見えたりして、ここが230万都市台北のなかなのだと気付かされました。
突然の爆竹にびくつく
途中にある何カ所かの廟の前では、独特の、奇妙と言えば言える振り付けで神様が踊ったり、若い人たちが獅子舞いをやったりするのですが、カメラを構えてレンズを向けている私のすぐそばでいきなり爆竹が猛烈な音を立て始めたりするものだから、おっかなびっくりの見学です。人垣の中に分け入るときでも、八重山でなら、大きなカメラで突き進んでみると周囲の人がなんとなくスペースを開けてくれるようなことがあるのですが、ここではそのようなこともなく、廟の大祭における身のこなしを体に覚えさせるうえでもいい勉強になりました。
迎える人びと
供え物を用意し、線香を手にする人。向こう側右は范将軍、その左は謝将軍
=台北市大安区光復南路456巷
酒を飲んでいる姿で知られる済公は人気があるが、かぶりものをしている子どもはこの後泣き出した
=台北市大安区光復南路456巷
迎える沿道の様子に注意を向けてみると、意外にもというべきか、やなりというべきか、通りに出したテーブルに供え物を並べ、そのすぐそばで線香を手にして行列が通り過ぎていくのを見送る人たちがいます。オフィス街のど真ん中でも線香を捧げ、紙銭を燃やすことが普通に行われる台湾であれば、取り立てて驚くべきことではないのかもしれませんが、おそらくそのようなことがあるに違いないと考えていたことを実際に目で見て確かめることができたのは収穫でした。