沖縄の米軍基地反対運動を支援する中華全球華人琉球之友協会がことし3月、台湾で発足しました。理事長の連石磊氏に対するインタビューをもとに2016年10月17日付「八重山毎日新聞」のコラム「不連続線」に執筆しましたが、紙幅の都合で言い尽くすことができなかったため、大幅に加修正した原稿をアップします。
インタビューは2016年9月9日に台北市内で行ったものです。
自治、独立に関心
連氏は「大事なことは、沖縄の人たちの自治と自決。これを後回しにするようなら、応援する。彼ら(辺野古など反基地運動)の状況に同情している」と述べ、時期は明示しなかったものの、現地でなんらかの支援を行う可能性のあることを示しました。連氏は、台湾で尖閣諸島(台湾名・釣魚台)の領有権を主張する中華保釣協会の常務理事も務めており、当面、尖閣諸島へ船を出すなどの計画はないとの見通しを示しました。
連氏は中国との関係を重視する統一派ですが、同協会内部には台湾の独立を志向するメンバーも所属。そのうちのひとりで事務局幹部の王啓逡副秘書長は「日本政府が反基地運動を圧迫することによって沖縄が独立するようなことになれば、日本のひとつの県である沖縄が独立できて、事実上の独立国家である台湾が今のままでいるのはおかしいということになる」として、台湾独立を推進する立場から沖縄の反基地運動に注目する姿勢を示しました。
沖縄の基地問題をめぐり、台湾のなかで統一派と独立派の双方が関心を示していることになります。
尖閣問題が契機
連氏によると、琉球之友協会は会員約50人。6月には台北市内で沖縄の将来像などをテーマにしたシンポジウムを開き、沖縄から出席した研究者らとも交流しています。
保釣協会とは「関係ない」としていますが、連氏自身を含む複数の理事が双方の協会に所属しているといいます。また、沖縄の反米軍基地運動に着目したきっかけとして「我々が尖閣諸島へ行こうとすると、日本政府は行かせまいとする。それならば、琉球でやり返すということだ」と述べ、尖閣諸島をめぐる領有権問題が結果的に琉球友之協会を反基地運動の支援に向かわせることになったと説明しました。
連氏は沖縄の状況について、日米地位協定を念頭に「不公平な状況にある」と批判しました。
台湾の安全保障と在沖米軍
また、在沖米軍が台湾の安全保障にとって重要とする考え方について「以前はそうだったが、中国との交流が始まってからはそうではなくなっている。この20年間で中国の力が強まり、台湾の人たちの考え方も変わってきている。以前は米軍に頼っていたが、それだけでなく、中国とのことも考えるようになった」としました。
資源は「共同開発」で 尖閣諸島
尖閣諸島の領有権問題では、2016年9月5日の日中首脳会談で、尖閣での偶発的な衝突を回避する日中防衛当局間の「海空連絡メカニズム」の早期運用開始に向けた協議の加速で合意した点を念頭に「問題を起こすことは、日中とも喜ばないだろう」と指摘。台湾の領有権を主張するために尖閣に船を出した場合、「蔡英文政権はわれわれの船を日本の海上保安庁から守らなければならなくなる。そうなったら、どうするのか」としました。
そのうえで、「尖閣については台湾と日本、中国がそれぞれ領有権を主張している。領有権の問題は領有権の問題として、豊富な資源があるのだから三者で共同開発したらいい」と述べました。