台湾と東京墨田区の町工場がデザインをキーワードにコラボしています。朝日新聞社のニュース週刊誌「アエラ」への寄稿を紹介しながら、取材で出会った墨田区の人たちや、デザインを想起させる台湾の「場」を紹介します。
末尾に動画のおまけがあります。たったの40秒。台南で2017年9-10月に開かれた台湾デザインエキスポの 一コマです。
銅製の如雨露を作る根岸産業の根岸洋一さん=2017年8月22日。
コークスを焚いた七輪の前に座り込み、コテを熱して銅製の部品をはんだ付けしている。
はんだは約250度で溶けだすため、如雨露を熱していくと銅製のパーツは一つずつばらばらになる。修理を依頼された如雨露が持ち込まれると、如雨露を分解してから部品ごとにあらためて磨きをかけ、再びはんだ付けをしてユーザーに戻す。
洋一さん氏の母、絹江さんは「修理できるなら、高くてもいい物を買おうというふうに変わってきたんですね。そういう流れに乗りました」と話す。
作業にいそしむ二宮五郎商店の職人=2017年8月23日
二宮五郎商店は20人の職人を抱える一方で、CADシステムも導入し、より確度の高い仕上がりを目指す。2代目の二宮眞一代表取締役は「熟練の技術と最新の設備で新しいものを作るんです」と話す。
台湾デザインセンター(TDC)が毎年開催している台湾デザイン博は今回で16回目。二大都市の台北と高雄で計6回開かれているほかは、台南地区では今年を含めて4回、北東部の宜蘭で2回、南東部の台東で1回開くなど、台湾全域を順繰りに回りながら行われてきた。
開催地ごとに地場の産業とデザインがコラボした試みを披露するのが恒例になっており、今回は台南の老舗レストラン「阿霞」がデザイナーとともに商品化したケータリングセットが発表されるなどしている。「デザインを活用すると地元の有名店がこんなふうに新しくなるということを台南の人たちに見てもらう機会」(担当者)というわけだ。
デザインを活用して台湾の内側から地場産業の存在空間を膨らませていく地道な積み重ねは徐々に実を結び、デザイン博の会場がグルメやショッピングのスポットとして観光地化されるケースも珍しくない。
台湾デザインセンター(TDC)の図書館で開かれた墨田区の展示会
=2017年10月1日
会場の図書館は、名前を「不只是図書館」(Not Just Library)という。デザインや建築などを中心に3万冊を所蔵する。担当者は「『ただの図書館じゃない』という意味。デザイナーの視野が狭くならないように、本を提供するだけでなく、イベントも開催していくことになっています」と説明する。
展示会は「iki iki sumida」のタイトルで、墨田区の今と江戸時代を比較しながら区内の産業を紹介した。
メリヤスのオリジナル商品を手掛けるオレンジトーキョーの職人が手ほどき
台湾の参加者の視線に集中力がこもる
=2017年10月1日
参加者は、職人の手元を一心に見つめる。視線に集中力がこもっていた。メリヤスのひもは、木製の台の上で編み上げられていき、徐々に平べったい形になっていく。赤や緑、薄茶、橙、灰色など色はさまざまだ。
オリジナルデザイン「まるあ柄」について説明する東屋の木戸麻貴さん
=2017年10月2日
東屋は2014年に創業百年を迎えた老舗。オリジナルデザインを生かしたアイテムは新しい百年に入るのを機にスタートした。
まるあ柄は隅田川の川面をイメージしているが、台湾でいきなり隅田川といってみても通じない。木戸さんは「墨田区には川がたくさんあることを説明しながら、柄の意味を伝えています」と話す。
【おまけ】
台湾デザインエキスポの動画(40秒)