カギは農産物か
高速フェリー「ナッチャン・レナ」(1万0712トン、台湾名・麗娜輪)が2016年5月14日夕、台湾の花蓮港から石垣港に到着し、百人規模の訪問団が石垣入りした。ことしは10回程度のチャーター運航が予定されているが、来年以降に定期化できるかについては、人の往来とともに、一定程度の積み荷を確保できるという長期的な見通しが立つかという点も重要なポイント。訪問団の団長を務める簫美琴(シアオ・メイチン)立法委員(国会議員に相当)や台湾の農業生産者ら約20人は15日午前、マックスバリュやいま店(石垣市真栄里)とJAおきなわの「ゆらてぃく市場」(同新栄町)で農産物や農産加工品について調査を行い、石垣・沖縄向けの農産物輸出に対して台湾側が依然として高い関心を持っていることをうかがわせた。
マックスバリュやいま店といえば、台湾など外国から石垣島を訪れる観光客がお土産を購入するスポットとして定着しており、今回の調査でもたっぷり1時間を費やした。滞在が1泊2日と短く、セレモニーなど時間的な拘束を受けるスケジュールも含まれていることから、今回の訪問団にとっても貴重なお土産購入時間となった。簫立法委員もマイバッグに2袋ほど買い物をし、台湾メディアのテレビカメラに向かってお土産の品々を取り出してみせたりしていた。
ただ、言うまでもないことだが訪問団がここへ来たのは土産物を買うことだけが目的ではない。
14日夜、入港直後に開かれたパーティーで、簫立法委員は筆者に対し、「花蓮はスイカで有名。細長い形をしていて、とても大きいんですよ」と語っていたが、15日の視察でマックスバリュやいま店を訪れると、スイカの陳列棚で立ち止まり、「花蓮のスイカは一玉500元から600元(1600円余りから2000円弱)。ここと同じくらいですね」と値段を確かめ、「花蓮のスイカはシンガポールに一玉1500元(5000円近く)で輸出しています」と品質の高さに自信を示した。
「本土ではなく、花蓮から」
今から7年前、姉妹都市の盟約を結んでいる沖縄県与那国町と花蓮市に石垣市と竹富町を含めた「八重山3市町+花蓮市」という枠組みで観光経済圏国境交流推進共同宣言が調印されている。この宣言に至る話し合いのなかで、花蓮側は「八重山では農産物や生活物資の多くを日本本土から移入しているが、本土との距離や花蓮との近さを考慮すると、農産物や生活物資を花蓮から輸入することが望まれる」という考えを示したことがある。この考え方は共同宣言に直接は盛り込まれなかったものの、花蓮側が八重山向けの農産物輸出に意欲を持っていることを示したものといえる。
「有機」への意識も
「ナッチャン・レナ」で石垣入りした訪問団も基本的にこうした考え方を踏襲しているとみていいだろう。加えて、シンガポール向けのスイカで触れたように、自らの生産物の品質に対する意識も高まっており、台湾でも取り組みが広がっている有機栽培のゴーヤー(ニガウリ)農家らが今回の訪問団に参加するなどしていた。花蓮で豊富に生産される黒米をじっくりと品定めする参加者もいた。
「人」の往来から「モノ」の意義浸透
石垣港で実際に農産物輸入を行うには検疫体制の確保という課題があるし、八重山の農業との間に無用な競争を生まない仕組みをつくるにはそれ相応の時間を費やすべきだ。花蓮航路を定期化するには、モノの往来がもたらす意義について浸透を図りつつ、当面は人の往来、とりわけ石垣・沖縄側からの人の送り出しから取り組むことだ。八重山からの送客として修学旅行や来年の与那国町花蓮市姉妹都市提携35周年を生かすことを提案したい。