絵みたいなネコ
プールから戻る途中でいつも前を通っている建物のところで、信号が赤になった。自転車を止めて青信号を待っている間もだるくて、顔の左側に異状を感じて振り向いた。ネコが2匹、ぼやけたような姿をしてなにものかを引っ掻くようなしぐさをしている。窓の外に網が張ってあり、わずかな幅しかない窓ガラスとの隙間に入り込んでいたものだから、ネコを描いた絵がほこりをかぶっているように見えたのだ。実際、ネコどもは私に視線に気づくと、絵の中に入り込んだみたいにぴたりと動きを止めた。見開いた眼に凝視された私が携帯のカメラでシャッターを切ったのが10時51分59秒。そのすぐ後にもうワンカット切ったのだが、ネコどもの姿はなかった。その写真の記録は10時52分07秒。
姿を消すには8秒あればいいということか。