気の毒な評価
「台湾の食べ物はどれもおいしいけど、これだけはダメ」という人が忌々しそうな顔をして挙げるのですから、「臭豆腐」にしてれば、迷惑このうえないことでしょう。
私は好きです。
最初から、あの独特のにおいが気にならなかったと言うつもりはありませんが、ぐっとこらえて中身のほうに挑んでみると、アツアツの汁がしみこんだ豆腐は美味で、においはその調味料なのだということが分かったのです。
「いかにも地元」な夜市を歩く
臭豆腐を初めて食べたのは2001年8月。場所は当時の台北県永和鎮にある楽華夜市でのことです。観光客も滅多にやってこないスポットです。ほとんど地元オンリーのこの夜市に、当時、石垣島の高校に通っていた台湾人姉妹の家族に連れられてやってきたのでした。台北市内のレストランで食事を済ませた後だったので、さらにまた何か食べるという感覚が理解できず(今なら分かりますが)、引きずられるように夜市を歩いていると、姉妹のうちのどちらかが日本語で「臭い豆腐というのがありますが、食べてみますか」と、ご両親のどちらかの伝言として私に尋ねてきたのです。
すでにその時点でこの姉妹の弟たちは臭豆腐の屋台に入っており、あとは私たちがそこに座るだけという状態でもあり、もともとそんなに好き嫌いのあるほうではないので、私は特に迷うことなくOKしたというわけです。その店の臭豆腐は辛みを効かせたものだったため、臭さよりも辛さにむせ返ったという記憶のほうが強く残っています。
相変わらず「地元」
風呂場で使う小さなたらいを購入した店。入り口に戦闘機を模した乗り物があり、「F16」というマークがあった。1回20元。こういうレトロな雰囲気が残っているのも悪くない
その15年と6日後に当たる2016年8月24日の夜、楽華夜市へひとりで晩飯に行き、そのとき食べた屋台でまた臭豆腐を食べてきました。観光客とすれ違わないところは15年前のままで、地元っぽい雰囲気が充満しています。辛みにむせてしまったところも同じですが、今回は一人だったものだから、つい自分を甘やかして買ってしまったビールを吹き出してしまったところが前回と異なります。しかし、辛みをこらえられるようになるころにちょうど一碗食切るというペースは「上達した」といえるのではないでしょうか。
帰り道、風呂場で使う小さなたらい(45元)とプラスチック製のいす(60元)、それに、用意するのを忘れていた枕(小さめのやつ、200元)を買ったので、生活は少しだけ快適になりそうです。
そう。夜市は、建物を持たないショッピングモールなんです。臭豆腐を食べてから、生活雑貨を品定めすることができる気取らない空間になっているのです。