ファッションビル
台南の林百貨を舞台にした舞台「昭和摩登 府城恋歌」が2011年7月に台南市内の映画館「全美戯院」で行われていた。YouTubeでその宣伝を見てみると、「化粧をして、パーマネントにした髪でエレベーターに乗るのが当時の女性たちの流行だった」というようなことを言っていた。日本統治下の台湾において、林百貨は5階建てのファッションビルをそびえ立たせていたわけである。
日本人と台湾人の区別なく
一方、現在の林百貨のパンフがかつての流行の代表格としているのはエレベーターだ。「単に当時の台南の人たちの興味を惹きつけただけでなく、流行になった」としている。このパンフがおもしろいのは、さらに続けて「エレベーターの中の小さな空間では、貧富の差はなく、日本人と台湾人の区別もなかった」と記しているところで、林百貨開業より11年早い1921年に発足した台湾文化協会などを挙げながら、「台湾の現代化というのは表面的な流行のことだけではない。思想のうえでも台湾は新しい時代に入っていった」と述べている。当時の社会状況を反映する建物として林百貨をとらえているのである。
今の流行
筆者が現在の林百貨を訪問したとき、土曜日ということもあって、にぎわっていた。館内は土産物や雑貨、本、カフェなどのスペースで構成され、台湾で最近よくみかける文創(文化とクリエーティブ)の造りが及んできたようにみえる。台湾の流行を踏襲したその姿は、デザインを通じて社会がソフト化している台湾の今を反映していることになる。