大谷石が醸し出す独特の雰囲気
ステンドグラス
パイプオルガンの演奏を教会の聖堂で聞いたのは初めてのことで、思わず立ち止まってしまった。
宇都宮にあるカトリック松が峰教会を訪れた時のことである。すでに別の記事で書いたが、知らない土地に行ったら、カトリック教会を訪ねてみようと考えるようになっていて、宇都宮で開かれる集まりに出席するのを前にこの教会のことを調べておいた。
落ち着いた雰囲気に包まれた聖堂
くすんだような薄茶色の雰囲気が聖堂全体に落ち着きを与えていて、オルガンの響きを引き立てている。訪問した時間帯が夕暮れ時の午後5時ごろで、窓から斜めに差し込む日差しがいい演出効果を出していたということもあるが、建材に用いられている「大谷石(おおやいし)」が空気の流れを独特にしているのである。
完成は1932年
式を終えた2人を紙吹雪で祝福する
大谷石をテーマにした大谷博物館のウエブサイトによると、大谷石は栃木県宇都宮市大谷町付近一帯から採掘される流紋岩質角礫凝灰岩の総称。教会のウエブサイトを読むと、松が峰教会はこの大谷石を使って1932(昭和7)年に竣工した。「古代および中世初期の教会建築とロマネスク様式によって建設されており、日本では数少ない双塔を持った教会建築」とのことである。
第1、第3日曜日には英語のミサ、第1日曜日にはポルトガル語のミサがそれぞれあり、まとまった人数の外国人信徒もいそうだ。
松が峰教会を特徴づける双塔
1998年には国の登録有形文化財に選定されている。文化庁の国指定文化財等データベースでは「大谷石を貼った鉄筋コンクリート造教会堂。階上を聖堂に充てる。両サイドから聖堂にアプローチする正面階段と、八角トンガリ屋根を頂く双塔が荘重な外観を造る」と説明しており、さらに「ランドマークとしてもよく知られる」とある。なるほど、確かにこの教会は少し離れたところからでも2本の塔を眺めることができるし、タクシーのドライバーも場所をよく知っていた。
結婚式の後はワインとケーキ
パイプオルガンの音色が流れるなかでの結婚式
オルガンの音色に耳を傾けつつ、40分ほどかけて見学・撮影をさせていただいたのだが、うかがってみると、翌日(2016年5月21日)にこの場所で結婚式が行われることになっており、その準備のためにオルガンを練習されているとのこと。御前(みさき)ザビエル神父には、式の見学についてお許しをいただき、おめでたい席に立ち会わせていただけることになった。
婚姻台帳への署名に向かう2人。左は御前ザビエル神父
荘厳で、温かみがあり、寛ぎを覚える結婚式だった。
式後にお引き留めいただいて参加した席も印象に残っている。聖堂の下にあるホールで、参列された方たちが新郎新婦とともに軽食を取りながらわいわいとやるのである。ケーキは信徒の方が手作りしたもので、もちろん筆者もいただいた。婚礼の席でワインが底を付いてしまったことから、イエスが水をワインに変えたという「奇跡」についても新婦のお父様がご説明してくださり、筆者もいっぱいだけいただいた。
新郎の鯛(たい)さんはタイの被り物のままでケーキカット
この日挙式したのは、鯛(たい)さんと飛鷹(ひだか)さんという方。新郎の鯛さんにはバルーンアートで作ったコイの被り物のプレゼントがあり、新郎はこれを被ってケーキカットを行い、出席者20人余りの小ぢんまりとした祝宴は沸きに沸いた。
いずれも宇都宮市の松が峰教会で松田良孝撮影