台湾沖縄透かし彫り

沖縄を歩いていると、台湾のことを感じることがあります。とりわけ、石垣島などの八重山地方では、そのまんまの台湾に出会ってしまうこともあります。では、台湾へ行ったらどうでしょう。やはり、沖縄を感じることがあり、かつて石垣島から移り住んでいった人たちと足跡を見付けることもあります。だけどそれは、薄皮を一枚剥いだようなところに隠れていることがほとんどなのです。

 沖縄を歩いていると、台湾のことを感じることがあります。とりわけ、石垣島などの八重山地方では、そのまんまの台湾に出会ってしまうこともあります。では、台湾へ行ったらどうでしょう。やはり、沖縄を感じることがありますし、石垣島の痕跡を見付けることもあります。だけどそれは、薄皮を一枚剥いだようなところに隠れていることがほとんどなのです。深く掘りすぎると、原形をとどめなくなってしまうかもしれませんね。元の姿をとどめつつ、だけど、内側に潜むものもちゃんと見える。そんな透かし彫りの方法で、台湾と沖縄を見ていきましょう。   松田良孝のページ | Facebookページも宣伝

移民村に定着した旧盆の伝統 石垣島・明石のエイサー(位置情報あり)

再来年は60周年

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明石のエイサーに登場した道化役の「京太郎」(キョンダラー)

=2016年8月16日、石垣市明石で松田良孝撮影

 

 八重山では、旧盆の中日は明石のエイサーと決まっており、今年も見てきた。ステージであいさつをする人たちは「素晴らしい伝統」といった表現で明石のエイサーを称揚し、時折雨が降る天気にもかかわらず、会場は見物の人たちでにぎわっていた。今や全国区になった感のあるエイサー。本土でも運動会のプログラムに取り入れられていたりすると聞く。もともとは沖縄の旧盆で奉じられていたエイサーは伝播していく文化だ。八重山にももともとはなく、沖縄本島からやってきた戦後の移民たちが持ち込んだものである。明石では再来年、60周年の節目を迎える。

 明石は1955年に発足した移民村である。琉球政府の移民計画によって大宜味村読谷村玉城村などから人々62人が1955年4月12日に移り住んできたのが始まりである。元は「フタナカ」と呼ばれていた地域に明石集落が発足するのである。

 

初のエイサーは1958

 

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1967年のエイサーの様子=「明石入植三十周年記念誌 土と共に」129ページ

 

 記念誌編集委員会編「明石入植三十周年記念誌 土と共に」(1985年)に掲載されている年表をたどっていくと、33ページに次のような記述があった。

  1958年 青年会で初めてエイサーを始める

 移民から3年後のことである。

 

茅葺小屋の前で

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1967年のエイサー。茅葺屋根が見える=「明石入植三十周年記念誌 土と共に」129ページ

 

 読谷村から明石に入植したメンバーのひとり、新里紹栄さん(1931年生)から2013年1月にうかがったところ、「楚辺から5、6人が来て、指導して、三線まで。楚辺のエイサーを習った」とおっしゃっていた。明石でもエイサーを行おうとした移民たちは、読谷村楚辺から指導者を招いてエイサーを習い、それを自分たちの村に根付かせていったというのである。

 「土と共に」の129ページには1967年のエイサーの様子が写真で紹介されている。

 踊り手たちの素朴な姿は今もそれほど変わらないが、会場の様子はまるで違う。今のようにひろびろとした芝生のスペースがあるわけではなく、民家の軒先である。おそらく、集落の中を一軒一軒まわっていたのであろう。茅葺小屋が写り込んだカットもある。

 

進化へ模索

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出番を終えた子どもエイサーの出演者たち=2016年8月16日、石垣市明石で松田良孝撮影

 

 58年目となったことし、明石のエイサーは、野底地区の「野底つぃんだら祭り」と星野地区の「人魚の里星野夏祭り」とタッグを組み、「北部地域3大夏祭り」として地元の人たちや観光客にアピール。半世紀以上にわたる伝統を土台に、イベントとしての取り組みを強化しようというのだ。

 

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「北部地域3大夏祭り」のポスター

 

 八重山は移民社会である。沖縄本島宮古、台湾などさまざまな地域からやってきた人たちがいることで、多様な文化を維持している。その一翼を担う明石のエイサーは2年後に〝還暦〟を控え、進化への模索を始めている。