再び「8月15日」へ
土地公祭の開催日は旧暦8月15日だが、2007年からこの日に近い休日に変更されている。台湾系の人たち、とりわけ学校に通う子どもたちが参加しやすいようにとの配慮によるものである。この方法は2019年まで続いたが、2020年から再び旧8月15日当日に実施されることになった。
平日か休日かはともかくとして、その当日に土地公祭を開催してほしいとの意向が根強いという事情が背景にある。2020年の土地公祭は旧8月15日に当たる新暦10月1日に開かれ、この日は平日の木曜日であった。
コロナで縮小
2020年の土地公祭は、新型コロナウイルスの感染防止を最優先とするなかで開かれた。
例年であれば、長テーブルに折りたたみいすで受付を作り、係の人が来賓を迎え、ご祝儀を受け取り、それと引き換えに折り詰めを手渡す光景がみられるが、2020年は取りやめ。例年であれば、手ぶらで見学に来た人も、ビーフンの振る舞いにありつけるのだが、こちらも取りやめ。踊りの余興も行われなかった。地元紙を通じた事前の告知もなく、メディアの取材や観光客の見学もなかった。
例年、土地公祭は昼食時間を挟む午前11時から2時間程度開かれるが、今年は開始時刻を1時間早めて午前10時とし、1時間余りで終わった。ブタの供え物は琉球華僑総会八重山分会と炉主が1頭ずつ出すほか、希望する人がいればこれとは別に供えることができるが、今年は分会と炉主で合わせて1頭に減らした。
新型コロナの影響で縮小された土地公祭だが、最後に炉主(ローツー)を選ぶ儀式は省かれることはなかった。炉主は、土地公の神像を香炉とともに自宅で1年間預かり、翌年の土地公祭まで線香をささげる役目で、参加者の間では大役とみなされている。2020年は、2014年から6年間務めた台湾・台中出身の王滝志隆さん(1954年生)に代わり、台湾2世の玉木茂治さん(1957年生)が務めることが決まった。王滝さんは「炉主を務めている間、孫が生まれるなど、良いことがたくさんあった。縁起のよさを今後もほかの人たちと分かち合っていきたい」と話していた。
台湾生まれの割合が増加
筆者の取材メモと同日撮影した写真を基に、2020年の出席者の構成を簡単に分析してみよう。
土地公祭にはこのところ、親睦団体の八重山台湾親善交流協会のメンバーが参観に来るようになっているが、2020年は役員2人が参加した。ほかに台湾系の人の知人数人が来場していたが、観光客やメディアの取材がやってくる例年に比べると、台湾系の人中心で開かれたという印象が強い。
台湾系の人は、八重山など日本生まれの配偶者を含めて24人が姿を見せ、このうち筆者が身元を把握できた人は23人だった。内訳は台湾生まれ12人、八重山など日本生まれ11人で、台湾生まれは52.2%を占めた。
この占有率を評価するため、筆者が比較的長時間現場で取材することができた2014年9月7日の土地公祭についても同じようにチェックしてみた。台湾系の人は44人が参加しており、このうち筆者が身元を把握できた39人。内訳は台湾生まれ17人、八重山など日本生まれ22人で、台湾生まれは43.6%を占めた。
つまり、台湾生まれの人が占める割合は、2020年は2014年より8.6ポイント高かったのである。台湾生まれの人は高齢者であることが多く、仕事や学校とのかかわりも薄い傾向にある。このため、平日でも参加しやすかったと考えられる。2014年には、台湾生まれの人の孫やひ孫の世代に相当する小学校低学年以下の子どもたちの姿が見られたが、2020年は皆無であった。
一方、新型コロナ対策で規模を縮小した影響については、台湾生まれの人の参加者数が17人から12人に減った点から読み取れるかもしれない。参加を取りやめたということである。さらに、減少分の5人のなかには、この間に死去した高齢者が1人含まれていた。世代交代がゆっくりと進み、台湾で生まれた人が少しずつ減っている点にも留意しておきたい。
第1回はこちら。